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9話-3 婚約話。

Penulis: 空野瑠理子
last update Terakhir Diperbarui: 2025-04-14 20:01:00

* * *

その夜のこと。

ブラン公爵邸の居間は凍りついたような空気に覆われていた。

エルバートの母であるステラ・ブランが馬車で執事と共に駆け付けてきたからだ。

腰が少し痛むフェリシアとエルバートの真向かいに座るエルバートの母は美しく、キリッとした表情でエルバートを見ている。

エルバートの父は公務で忙しい方らしく、

執事とふたりでここ に駆け付けてきたのだとエルバートと玄関で出迎えた際に彼女からすでに聞いており、

エルバートによると、母だけでも厄介で、マナーに厳しい方らしく、

面倒そうな顔をした後、 気をつけろ、良いな? と居間に入る前に念を押された。

けれど、令嬢でもない自分がこの場に同席しているだけでも、すでにマナー違反な気がしてならない。

「エルバート、ブラン公爵邸が魔に襲われるだなんて、一体、 どういうことなの?」

エルバートの母が怪訝な顔で尋ねる。

「魔が私の力を上回り、一部の結界が破られ、入り込まれた」

「よって、今後は結界をより強化し、ブラン公爵邸を守っていく。それだけのことだ」

「母上にご足労頂くことも、もうない」

「そう」

エルバートの母は冷たく返すと初めてフェリシアを見る。

「貴女が花嫁候補のフェリシア・フローレンスさん?」

「は、はい」

エルバートの母は、にっこりと笑う。

「単刀直入に言うわ。エルバートに婚約破棄をさせるから今すぐここから出て行って頂けるかしら?」

フェリシアは固まり、エルバートは表情を崩さない。

「エルバートには、こちらのアマリリス・シェリー嬢とご婚約して頂きたいの」

エルバートの母は鞄から新聞のようなものを取り出し、スッと差し見せる。

(わ、綺麗な人……)

「よって、こちらの事情も兼ねて、貴女には良い額を支払う

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